第10夜(2024年7月8日) 直線歩道


 西武多摩湖線の八坂駅というところの駅前に、道路を横断する形で長めの歩道橋のようなものが架かつている。気になつて歩いてみたら、どうやら自転車専用の橋のようであり、橋を降りたどちらの先にも自転車専用の道路が続いている。ふうむと感心していたら二十分に一本の電車を逃すことになつた。まあいつもこのような感じであるから、嘆くには当たらない。

 調べてみたらこの自転車専用道路はおよそ十キロメートルもある都内で一番長い直線道路であり、道路の下を多摩湖から境浄水場まで繋がる水道管が通つているとのこと。東京都民が使う水を賄うのは大変なことであり、そのために貯水湖としての多摩湖・狭山湖の工事が行われたらしい。先日初めて多摩湖を見たときに人工的な風景に感じたものであつたけれども、ちやんと理由があつた訳である。



 私は自転車を持つていないので、直線で十キロメートルの自転車専用道路を端から端まで歩くのは厳しい。さらに調べてみると、多摩川から多摩湖へ水を引く水道管もあつて、かつてはその上に線路があつたけれども現在では線路はなく、直線状の細い歩道だけが残されているらしい。こちらは直線で二キロメートル程ということなので、歩いてみることにした。



 ゴープロという景色を撮影するカメラを持参して最寄りの羽村駅で降りた。日差しが強いのでコンビニで日焼け止めを買つて塗つた。観光案内所の説明によれば玉川上水を造つた玉川兄弟の像が多摩川縁の羽村取水口にあるという。見に行つてみたら、若者の像であつた。昔は平均寿命が短かつたからということもあるだろうけれど、感心な若者である。彼らが造つた玉川上水は一部は現在も上水道として使われており、数多くの桜が植樹されていることもあつて沿岸の人々に愛されている。

 歩いていると多摩川を渡る幅の細い橋があり、かつては線路が通つていたであろうことが推察された。線路を使つて多摩川の砂利を多摩湖の工事現場まで運んでいたそうである。お目当ての直線歩道は入り口を探すのに少しく手間取つたけれども、無事に歩き通すことができた。歴史的な理由から直線の道が残つているので、道が無さそうなところでも道があるのが面白く、周囲が住宅街、団地、工場と変わつていくのに道そのものは昔の姿のまま変わらないのも面白い。最後は米軍基地で行き止まつた。丁度夕方五時になり、日本と米国の国歌が相次いで演奏されて興き深かつた。一応注意喚起しておくと、歩道は複数の自動車道路を跨いで繋がつているけれども信号機も横断歩道も無いから、左右によく気を付けて渡る必要がある。



 帰つてゴープロの映像を見ると、天気が良かつたのでよく映つていたのは良かつたけれども、映像がかなり斜めに傾いてしまつていた。録り直しかなあ。






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2024/7/8
文責:福武 功蔵