第1夜(2024年6月2日) 丁度


 日曜日は家の者と仲良く過ごすのがモツトーであるからして、私と家の者と二人で外で昼食を食べて買い物をして家に帰る途中に、コンビニでスイーツを買おうということになった。



 コンビニスイーツといえばエルソンである、近時ジヨブチユーンというテレビ番組でも高評価で、他の店舗のスイーツは合否を決める番組になるのに、エルソンに限ってはどのスイーツが一番美味しいかという議論の番組になつてしまう程のもので、コンビニ業界の大手二チエーンに水を開けられてしまつたエルソンのスイーツに関する経営努力は素晴らしいと力説しながら、二人してエルソンに入つたけれども、あいにくその日は昼食の後に家で二人で分けて食べるのに丁度良いスイーツが置いていなかつた。力説が空振りして恥ずかしいパターンである。

 気を取り直して、コンビニ業界不動の二位を誇るエフエムマートに入る。エフエムマートのスイーツもなかなかのものであると力説しながらスイーツコーナーを見ると、抹茶バウムクーヘンという丁度良さそうなスイーツがあつたので、これを買うと決めた。私がレジに並び、家の者は先に店を出て、外で会計が終わるのを待つている。



 抹茶バウムクーヘンの価格は二百三十八円だつたので、私は財布から二百五十三円を取り出してコンビニの店員へ手渡した。

「丁度二百五十三円頂きます」コンビニの店員が、こう言つた。

 私は、「丁度じやないけどな」と思つたけど、黙つていた。

「お釣り十五円です」とコンビニの店員は私に十円玉一枚と五円玉一枚を手渡してきたので、私はもやもやした気分のまま、それらを受け取つた。

 店の外で家の者に、会計の際の出来事を話して、「丁度じやないよなあ」と同意を求めた。

 家の者は、「丁度じやないよね」と私に同調してくれた。「なんで『丁度じやない』と言わなかつたの?」

「それは、丁度二百五十三円ですと言つて、そのままお釣りをくれなかつたらそう言つたけど、お釣りをくれたから言わなかつたんだよ」

「うん。…でも、丁度じやないよね」

 家の者は、何かに気付いた顔をして、

「もしかして、お釣りが丁度だつたんじやないの?」と言つた。

 私もそれを聞いて、そうかお釣りが丁度だつたのか、と思つた。

 お釣りは、十円玉一枚と五円玉一枚。十五円。



 丁度じやねーよ。

 私と家の者は、顔を見合わせて笑つた。抹茶バウムクーヘンは、宇治の高級な抹茶を使つているとかで、二人で美味しく頂いた。

 あれかな、コンビニ業界では十五円お釣りが出るのは逆に丁度なのかな。コンビニ業界の人、教えてください。






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2024/6/2
文責:福武 功蔵