村上春樹は1980年代に「ノルウェイの森」で、ミスターチルドレンは1990年代に「イノセント・ワールド」でブレイクを果たしました。
どちらも当時は新しかった、個・孤・子をテーマとしたところが共通するように思います。
今思い返してみると、これらのテーマは読み手に、聴き手に勇気を与えてくれました。
周囲とは関係なく、自分は自分らしくあればよいのだと。
まさに新しい物語によって、同調圧力が強かった、古い農村共同社会を上書きしていったのです。
現在はその揺り戻しが来ている時期だと思います。
個・弧・子であることに疲れた人たちが、集団・連帯・親を求めている時代。
優しさという言葉が入り口として機能していますが、優しさは本質ではありません。
かつてのような、既存の揺るがし難い集団・連帯・親ではなく、自分が望むような集団・連帯・親を共に作り上げていくことが求められているのだと思います。
フィクションの世界でも、好まれているのは群像劇です。
これは世界的な潮流だと思います。
「アイ=I=Identity」に疲れた人たちが、「アイ=会い=合い」を求めているのです。
…なんてね。