第89回 村上春樹とミスターチルドレンの巻


 村上春樹は1980年代に「ノルウェイの森」で、ミスターチルドレンは1990年代に「イノセント・ワールド」でブレイクを果たしました。

 どちらも当時は新しかった、個・孤・子をテーマとしたところが共通するように思います。



 今思い返してみると、これらのテーマは読み手に、聴き手に勇気を与えてくれました。

 周囲とは関係なく、自分は自分らしくあればよいのだと。

 まさに新しい物語によって、同調圧力が強かった、古い農村共同社会を上書きしていったのです。



 現在はその揺り戻しが来ている時期だと思います。

 個・弧・子であることに疲れた人たちが、集団・連帯・親を求めている時代。

 優しさという言葉が入り口として機能していますが、優しさは本質ではありません。

 かつてのような、既存の揺るがし難い集団・連帯・親ではなく、自分が望むような集団・連帯・親を共に作り上げていくことが求められているのだと思います。

 フィクションの世界でも、好まれているのは群像劇です。



 これは世界的な潮流だと思います。

 「アイ=I=Identity」に疲れた人たちが、「アイ=会い=合い」を求めているのです。

 …なんてね。




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2022/8/25
文責:福武 功蔵