第129回 替え玉を注文するの巻


 昼食にラーメンを食べました。よくあるような、とんこつラーメンです。ずいぶん久しぶりにその店に入りました。一番安いラーメンを注文したのですが、以前よりも150円増しになっていました。小麦をはじめとする物価高がここにも影響を及ぼしているのです。

 以前は替え玉1玉無料でした。しかし、店内を見渡すかぎり、替え玉無料という記載はメニューにも壁にもどこにもありません。やはり物価高の影響は大きい。私は水を飲むためにマスクを外し、冷たい水を飲みました。うまい。マスクを外す開放感。

 しばらくして私が注文したラーメンが提供されました。個包装された割り箸のビニールを破り、箸を使ってラーメンを食べます。高菜は無料トッピングのようなので、ふたつまみほどラーメンに入れて食べます。美味しい。以前と味は変わっていない。一番安いラーメンですがチャーシューも少し入っており、私は満足でした。

 私を含め、客はカウンターに横並びに座っています。私の右隣に座る学生が、替え玉を注文しました。さすが育ち盛りの学生です。成熟した大人の私はこうはいかない、最初の一杯で十分です。十分な身体になってしまったと言うべきか、これが成熟であり、大人ということであります。私は成熟した大人らしく、ゆっくりと残りの麺を噛み締めました。

 学生は、きっと替え玉の料金を支払うのでしょう。そう思って見ていましたが、学生が料金を支払うような素振りはありません。他の客からも替え玉のコールがかかります。私は…私は成熟した大人だから、大丈夫。最初の一杯で十分美味しかったしお腹も満たされたはずです。

 そのとき、店員が着ているシャツに気が付きました。背中に大きな文字で「替え玉無料」と書いてあります。なんと、替え玉はやっぱり無料だったのです。でも私は…私は成熟した大人…



 「…替え玉ください」私の声が響き渡りました。

 どうやらまだ成熟した大人になっていなかったようです。



 ちなみに右隣の学生は、さらにもう一杯替え玉を注文していて、それも無料でした。あれ?むしろコスパ良いのでは?私?私は成熟した大人ではないが、さすがに替え玉の分でお腹は満たされており(正直、最初は完食する自信がなかったのですが、紅生姜をたっぷり入れると完食できました。)、さらに替え玉を注文するのは無謀というものであります。

 今日の発見は、私がまだ成熟した大人になっていなかったことかなあ。いったいいつ成熟するのでしょうかねえ。やれやれ。


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2022/8/18
文責:福武 功蔵