第124回 プーチン大統領のウクライナ侵攻について(その1)の巻


 ロシアのプーチン大統領がウクライナへ侵攻しました。

 プーチン大統領の顔を見ると、死にたくない、という表情をしているから、ウクライナへ侵攻しないと大統領の地位から下ろされて自分が殺されてしまうと思っているのでしょう。

 したがってロシアがウクライナへ侵攻したというよりは、プーチン大統領がウクライナへ侵攻したという表現が合っています。

 現に、ロシア国民であることが恥ずかしいと言っている人が大勢いるし、反戦デモもあったし、2022年1月31日付けで全ロシア将校協会のホームページにレオニド・イヴァショフ退役上級大将が、ウクライナ侵攻はプーチンが自分の権力と富を守るためだけの戦争なので辞任を要求する旨の内容の書簡を上げています(これらの話は日本のテレビ報道でも話が出ていました。普段は謙抑的な報道姿勢に止まるので、今回の報道姿勢は喜ばしい。)。



 新型コロナウイルスが中国発祥だからと言って、中国人に対し差別的態度を取ることがばかばかしいことは体験したばかりであり、欧米人から見て日本人と中国人の違いは分からないから日本人に対する暴行があったりして、ますますそのばかばかしさが理解できたところです。

 今回の事件はプーチン大統領の侵攻ですから、ロシア国民に対しネガティブな感情を持つことは間違っているというところは、押さえておきたいところです。



 レオニド・イヴァショフ退役上級大将の書簡には次のようなことも書かれています。

 ―ロシアは現在、深刻なシステム危機に陥っている。しかも、ロシアの指導者たちは、国をシステム危機から救うことができないことを理解している。システム危機が続くことで、いずれ民衆が蜂起し、政権交代が起こる可能性が出てくる―

 これは、独裁国家において、次の指導者を育てることができなかったことを示しており、プーチン大統領のウクライナ侵攻は、独裁国家で起きた病理現象と位置付けることができます。

 王国のように親族間で次の指導者を育てる北朝鮮、背後に強固な選抜システムを持つ中国は、次の指導者を育てているでしょうから、独裁国家が必ずロシアのようになるとはいえません。

 中国の習近平国家主席は、前例を覆した長期政権になっている点が心配ですが、この間の中国の大きな経済的成長の特別功労と説明できますから、次の指導者へスムーズに引き継げそうです。

 なお、韓国では元大統領の多くが大統領を辞めた後に逮捕され、裁判で有罪とされ収監されている一方において、死刑の執行が停止されており、これはひとつの知恵だと思います。既に別のところで述べたように、超大国は独裁制にならざるを得ないところがあります。指導者に不安を与えないようにするために、超大国では死刑を明確に廃止しておくべきでありましょう(ロシアも廃止ではなく執行停止状態のようです。明確に廃止しておくべきであったか。)。



 独裁国家でも独裁者の死の時点で政権交代があります。民主制よりは長いですが、政権交代がないわけではない。

 問題は政治の体制ではなく、情報が公開されるかどうかです。政権について検討し批判する声が公開されない、政権に届かないとなると、政権は腐敗し全く改善されることがないということになってしまいます。政権が批判に耳を傾け自らを律する、改善することが大切であり、この対話の仕組みがあって、人を人として尊重する文化があることが大切であるように思います。繰り返します。尊重と対話こそが重要なのです。



 もうひとつ、今回の事件を機に、皆気付くべきことがあります。結局は国家は暴力装置であるということです(暴力装置が何であるかを学ぶには漫画「嘘喰い」を読むとよい。)。



 国家がどのようであるかは、一個人にはどうしようもないところがあります。

 小規模な国は王国で十分です―中東の産油国の体制は今後も続きそうです。超大国は独裁制にならざるを得ないところがあり、民主制のアメリカも大統領の権限が大きく独裁制に近いところがあります(アメリカは超大国でありながら情報公開に努めており、学ぶべきところがあります。)。



 そのような国家にとらわれることなく、各自が自由に人生を生きること。

 状況によりその自由さには違いが出てしまうとは思うけれど、ひとの精神は自由であって、どこまでも羽ばたけることを信じてやみません。

 国家が暴走したときは、村上春樹先生の有名なフレーズ、「やれやれ」と言って肩をすくめて見せ、現実的な方策を採ることが大切だと思いました。

 


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2022/2/27
文責:福武 功蔵