第62回 LoL日本代表Worlds本戦初出場の巻


 LoL日本代表チームがLoLの世界大会であるWorlds本戦初出場の快挙。

 知らない人向けに解説すると、まずLeague of Legends(通称LoL)という世界で一番プレイ人口の多いゲームがあり、5対5で戦うゲームです(5人のポジションはトップ、ジャングル、ミッド、ADC、サポート)。各国にプロリーグがありますが、日本にもLJLというプロリーグがあり、LJLで優勝したDetonation Focus Me(DFM)が世界大会であるWorlds2021へ出場しました。

 このLoLというゲームでは、韓国と中国が圧倒的な強さを誇っています。まずは韓国、LoL界のリオネル・メッシと言われるFaker選手率いるT1が、3度も世界を制しています。Faker選手は現在25歳ですが、Faker選手を見て育ったChovy選手(20歳)とShowmaker選手(21歳)が、現在最強のミッドと言われています。韓国人選手は世界中のチームで主軸として活躍しており、日本のDFMにも韓国人選手が3名所属しています。次に中国、圧倒的な人口の多さから、中国のプロリーグは17チームが鎬を削るさながら修羅の国で、試合数も非常に多いです。ここで優勝したチームが強いのは当然のことでしょう。直近の優勝チームはEDward Gaming(EDG)です。

 韓国と中国のチームに食い下がり、時に優勝をもぎ取るのが欧州と北米の2地域です。この4大地域の牙城は固く、他の地域をほとんど寄せ付けませんが、台湾やベトナムが時々番狂わせを演じ、これらの地域もリスペクトされていて、4大地域と並んで本戦のシード権を持っています。

 日本はというと、これまでは厚い壁に跳ね返され、本戦出場をかけたプレイインでの善戦止まりであり、本戦出場はできませんでした。しかし今年、ついに歴史が変わりました。



 日本代表のDFMのプレイイン初戦の相手はロシア代表のUnicorns Of Love(UOL)、これまで何度も戦ってきた強敵です。UOLは昨年のWorlds2020では見事にプレイインを勝ち上がって本戦出場を果たしています。

 DFMは一発勝負に賭けていました。最後の2ピックでジャングルにタロンを、トップはジェイス相手にナーを出したのです。タロンは初めて見せるピックで、相手は対応が難しくなります。4分、トップレーンでナーがメガ状態となりタワー下で相手トップのジェイスをスタンし、タロンがダメージを合わせて最初の1キル(ファーストブラッド)を取ります。その後は一進一退の攻防が続きますが、19分に相手側ジャングル内で飛び込んだサポートのレオナにタロンが合わせて相手ミッドのオリアナを倒したことで、試合の流れがDFMへ傾きます。25分、トップレーンでの1対1で体力を削られたルブランを囮にして相手2名を引き込み、追撃から有利な形で集団戦を始めて3キルを獲得、バロンにつなげます。33分のドラゴン前での集団戦ではドラゴンを倒してマウンテンソウルを獲得するとともに4キルを取ってバロンを獲得、相手ネクサス付近でエースを獲得して試合を畳みました。

 この初戦を勝てたのが大きく、2戦目は北米3位のCloud9(C9)に対し、DFMのEvi選手がサイラスをバンするところで間違えて隣のサイオンをバンしてしまったことで、相手のサイラスに暴れられて敗れたものの、3戦目、4戦目はそれぞれトルコ代表のGalatasaray Esports(GS)と台湾2位のBeyond Gaming(BYG)に圧勝しました。

 圧勝はいずれもDFMのEvi選手のアーゴットがトップレーンで有利を取って相手に先にテレポーテーション(TP)をレーンへの復帰に使わせておいてから、自分のTPをボットレーンへ使ってボットレーンでの少数戦を勝利に導いたことがきっかけとなりました。GS戦では5分にアーゴットがボットレーンへTP、3キルを獲得。16分でチームゴールド4K差を付け、4ドラゴンを獲得して27分で勝利。BYG戦では3分にアーゴットがボットレーンへTP、2キルを獲得。13分でチームゴールド5K差を付け、相手にタワーを1本も折らせずに30分で勝利。Evi選手は世界に通用するトップであることを示してみせました。

 3勝1敗でプレイインを終えたDFMはBグループ2位で、Aグループ3位と4位の勝ち上がりのチームと戦う予定でしたが、その後に行われた試合でそれまで無敗だったC9が全敗だったUOLに敗れ、3勝1敗となりDFMとタイブレークを戦うことになります。まさかのUOLによるアシストであり、ネット上にはUOLへの感謝の書き込みがあふれました。

 C9とのタイブレーク戦では、サイラスをきっちりとバン。Evi選手のアーゴットとナーはバンされましたがセトをピックして集団戦に備えます。2分、ボットレーンで相手のアムムがミニオンにスキルを使ってしまうミスを犯し、そのミスを突いてファーストブラッドを取ります。7分には相手がミスを取り返そうとして深く入り込んだところを突いて2キルを追加。13分にトップレーンでの追撃から2キルを取ったC9が逆転しますが、27分のミッドレーンでの集団戦で上手く相手のミスフォーチュンのウルトを避けたDFMが3キルを取りバロンにつなげて再逆転。33分のエルダードラゴン前の集団戦ではセトが相手のダメージをタンクしている間に味方が3キルを取り、エルダードラゴンを獲得。バロンも獲得し、相手ネクサス付近でも3キルを取って試合に勝利しました。

 タイブレーク勝利により、DFMは、Aグループの勝ち上がりチームと戦うことなく、Bグループの1位抜け、世界のベスト16が出揃う本戦出場がかなったのです。歴史が変わりました。

 本戦では、DFMは結果として6戦全敗でしたが、最初の3戦と次の3戦を比べると内容が大きく向上していました。特に北米1位の100Thiefs(100T)戦は非常に惜しかったです。大きな手応えと多くの新しい課題を持ち帰り、日本代表チームは新たな段階に入りました。ちなみにC9は本戦グループリーグを2勝4敗とし、タイブレークを制してベスト8へと勝ち上がっています。日本代表チームも今後に大きな可能性を示したということができます。

 


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2021/10/17
文責:福武 功蔵