第28回 4−3−3の巻


 W杯予選のオーストラリア戦。日本代表が2−1で勝利したのだが、報道を見てもいくつか書いていないことがあるので、備忘に書いておくことにする。

 勝因のひとつがぶっつけ本番の、ボランチ3枚(遠藤、守田、田中碧)を中盤に並べた4−3−3システムであることは間違いない。特に初先発の田中碧である。このシステムがはまったために、前半から良い内容のサッカーができていた。

 ボランチの3枚が何をしていたのかというと、バックラインを助けていた。ビルドアップのときに、田中碧がCB(センターバック)吉田の右側に入り、代わりに右SB(サイドバック)酒井が高い位置を取る。あるいは守田が同様にバックラインに入り、左SB長友が高い位置を取る。一時的に5バックになるのである。

 最近は、CBの二人に対し相手選手がプレスに来ることが多く、CBが対応に苦慮する結果、SBの位置が低くなっていた。その結果、どうしてもSBの攻め上がりが遅くなるし、攻め上がったSBの裏のスペースを使われて不利になることも多かった。SBの裏のスペースをボランチがカバーすることでSBは高い位置を取ることができるようになり、両SBの攻撃力というチームの強みを活かすことができるようになった。

 田中碧は、中央でもCBに寄ってボールを引き出したりして助けていた。とはいえ、このエリアでの組み立ては正直言って危なっかしい。CB吉田は、プレッシャーのかかる場面でミスパスをしてしまう傾向があるからだ。反対に、プレッシャーさえ無ければ非常に良いパスを出すことができる。

 その非常に良いパスが、決勝点に直結したFW(フォワード)浅野へのパスである。吉田の浅野へのパスもピタリなら、浅野のトラップもピタリであった。ここはメチャクチャほめて良いところなのだが、そしてCBからFWへのパスはリバプールを始めとした現代サッカーの最先端なのだが、吉田をほめる記事が見当たらないのは残念である。このパスは決して当たり前に出たパスではなく、ボランチ3枚がバックラインを助けまくった結果としてCBに余裕と自信を持たせたことで出たパスだと思う。

 もうひとつ、4−3−3がはまった要因は、前線の強さにある。後方でボランチがバックラインを助けに入れば、当然前線とバックラインの間にいる選手の数が減り、前線の選手は孤立する。前線の選手は正確にボールを収めて味方が攻め上がる時間を作る必要がある。FW大迫と右MF(ミッドフィールダー)伊東の二人はこの仕事を難無くこなした。別にこの試合が特別良かった訳ではなく、二人とも以前から並外れて良く、チームのストロングポイントになっていた。大迫は直接ボールを受けてポストプレーを行い、伊東は裏へ飛び出すか、引いた位置で受けてドリブルやワンツーで局面を打開していた。これに対し、左MFの南野はストライカーであり、どちらのプレーも得意ではないので、左MFは浅野でよかったのかもしれないが、スピードのある浅野と古橋は相手に疲れが出る試合の後半に交代出場した方が良いというのが森保監督の判断だったのだと思う。

 オーストラリアの得点源の6割がセットプレーだというが、日本代表は試合を通じて、コーナーキックやフリーキックというオーストラリアが得意なセットプレーを与えることが少なかった。全体的に良い試合ができていたからであろう。日本が喫した唯一の失点は自陣ゴール近くからのフリーキックだったが、これはクロスバーに当たって入る非常に上手いキックであり、止めようがなかった。サッカーにはこのような、味方のミスというよりは相手のスーパープレイというしかないことが必ずあるので、試合に勝つには2点目、3点目を取ることが重要になる。

 


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2021/10/13
文責:福武 功蔵