第57回 ThinkPad X1 Carbon(2014年式)のキーボード換装の巻


 ThinkPad X1 Carbon(2014年式)のEnterキーが壊れたので、修理に出しました。

 ついでにバッテリーの不具合(モバイルなのに一定時間経つとAC電源につながないと電源が入らなくなる)と、

 カバーの小さな破損も気になったので、ついでに不具合として記載して修理センターに送りました。

 すると、なんということでしょう。

 修理代27万円という回答が来ました。

 内訳は、天板部分の取り替え、ベース基板の取り替え、ベース部分(基板以外)の取り替えです。

 全取っ替えやないかーい。

 27万円あれば新型が買えてお釣りが来るやないかーい。

 2014年式を買ってから3年が経っているので、新型の購入も考えたのですが、

 よくよく考え直してみれば、Enterキーが壊れている以外は、普通に使えるのです。

 というわけで修理センターへは「高いよー。早く送り返してー」と言って送料と検査料の5000円だけをお支払いして、

 オークションでキーボード部分だけを入手。こちらは5000円もしなかったです。

 …しかし、ここからが大変でした。



 2014年式は、その後に撤回されることになるアダプティブ・キーボードを新規採用したこともあり、

 ぎりぎりに部品を積み込んでいて、キーボードの換装にはほとんど全部品を取り外さないといけないという鬼仕様だったのです。

 ちなみにこのアダプティブ・キーボードは、キーボードの数が減るので私はとても好きなのですが、

 ちょっと近くに手をかざしただけで誤反応することがあり、撤回やむなしかなという感想です。

 一番きついのがネット閲覧中のF5キーで、誤反応で現在のページを更新してしまいます。外で見ていてページが消えてしまうことがよくありました。



 別のパソコンで保守マニュアルを見ながら、書いてあるとおりに作業を進めます。

 ネットで見つけた記事を参考に、あらかじめBIOS設定画面でバッテリーからの電源供給を切ってから分解を始めます。たぶんとても重要。

 まずネジを外して底のカバーを取ります。次にバッテリー。

 SSD。サウンドカード。LANカード。スピーカー。USBパーツ。ファン。

 CPUを含むメイン基板。ひとつひとつが、薄い紙のような端子でつながっているので、本当に元通りつながるのかとても心配です。

 ネジも小さいし、いっぱいある。

 きゅー。きゅーり。

 最近、1000円カットに行って「短くして下さい」と言ったら、なぜか河童みたいな髪型になってしまった私は、

 不安から、河童の好物である「きゅーり」という鳴き声を連発してしまうのでした。

 メイン基板につながる端子のうち一つだけ、厳重に黒いテープで接着されているところがありました。

 私の本能がささやきます。「コノ端子ヲ外シタラアナタノ技術デハ復旧デキマセンヨ」

 どうしよう。



 黒いテープで接着されたメイン基板の端子は外すのをあきらめます。

 幸い、一番端っこの端子だったので、端子をつなげたままでもメイン基板の抜き取りができました。

 次はモニター部分。ヒンジのネジを外してから90度曲げて、モニター部分をすっぽりと抜き取ります。

 正直、どうやって外れたのか仕組みがよく分かりません。

 保守マニュアルによれば次はアダプティブ・キーボードを外すことになっています。

 しかし保守マニュアルに書いてあるのとネジの位置が異なり、外し方が全く分かりません。

 しばらくにらめっこをした結果、アダプティブ・キーボードは外さなくても、キーボードの換装ができるのではないかという結論に達しました。

 いよいよキーボードの換装です。



 キーボードの換装は、保守マニュアルに記載がないのねー。

 「○○を取り外す必要があります」という記載だけで、肝心なキーボードの換装の方法が書いてありません。

 ネジの数は20個以上あります。

 さあ記憶と技術だけが頼りです。キーボードの裏に走る配線も、正確に復元する必要があります。

 配線の中を別の配線が立体交差でくぐり抜けているところがあり、保守マニュアルに書いてない配線をいったん外す必要がありました。

 まずネジを外し、古いキーボードを外すのですが、

 キーボードの裏に走る配線が接着剤で接着されていて、無理に配線をはがさないと取れないネジが2個ありました。

 無理にはがした結果、配線は破れてしまいました。

 ネジもとても小さいです。これまで扱ったことがない小ささ。そしてとてもいっぱいある。指からネジを下の絨毯へ何度も落としそうになって焦りました。

 きゅーり。きゅーり。きゅーり。



 古いキーボードを外して、新しいキーボードを取り付けます。

 モニター部分の取り付け。そしてメイン基板です。

 ここで、新しく買い求めたキーボードが新品ではなく中古品であることによる難点が判明。

 キーボードからメイン基板へつなげるための配線が、接着剤でキーボード裏に貼り付いてしまっており、

 配線をつなげることがとても難しくなっているのです。

 ついでに言うと、貼り付いた配線の下のネジ2個は、はめることができませんでした。

 新品であればおそらく、接着部分に保護シートが付いていて、まだ配線がキーボード裏に接着していないため、簡単につなげることができるのでしょう。

 本来は、メイン基板へ配線をつなげた後で保護シートをはがして、キーボード裏に接着するという作業手順なのだと思われます。

 きゅー。きゅーり。

 絶望の真夜中でしたが、キーボードの売り手も鬼ではなく、うまく配線をねじって頑張ればぎりぎり届くかなという距離感です。

 ここが一番の難所だったと思います。午前1時、なんとか配線に成功。ただし端子がペラペラなので、うまく配線できたかどうか自信は全くなかったです。



 ファン。USBパーツ。スピーカー。LANカード。サウンドカード。SSD。底カバー。

 取り外したのと逆の順番で取り付けていきます。

 取り外したときは気が付きませんでしたが、ファンのヒートシンクはCPUに直付けなのですね。グリスが取れなかったのは幸いでした。

 取り外したメイン基板やファンの置き方を間違えると、グリスがはがれてしまって大変なことになっていたことでしょう。

 スピーカーも、完全に取り外すのではなく、

 配線がぐるぐると無数のテープで本体と接着されている部分は取り外さずに、本体と一体のものとして扱ったのが吉と出ました。

 修理の人がやってくれたのか最初からなのか、本体の端を通って左右のスピーカーをつなぐケーブルが、黒い無数のテープで本体に固定されていたのです。

 LANカードの取り付けが難しかった。記憶を頼りにグレーの配線を上、黒の配線を下につないで、上から透明なテープで圧着しました。

 さて、全損を覚悟の上で、立ち上げてみます。おっ、立ち上がるぞ。



 まさか再び立ち上がってくれるとは思っていなかったので、とてもうれしかったです。

 不具合は、Wi-fiでネットにつながらないこと。つまりLANカードが認識されなくなってしまい、BLUETOOTHも反応しなくなりました。

 まあでもこのLANカードは以前から調子が悪いことがあったので、この程度なら全く気になりません。

 キーボードは快適です。Enterキーはやっぱり重要ですね。

 こんな苦しく難しい作業をやり通せたことが、本当にうれしかったです。

 でももう二度とやりたくないし、ThinkPad X1 Carbon(2014年式)のキーボード換装は全損を覚悟しなければいけないので、おすすめしません。

 とりあえずアマゾンで、USB接続のWi-fi子機(BLUETOOTHにも対応)をポチッと買ったので、今日にでも届くはずです。これで大丈夫なはず。

 来年の新型が出たら買おうかなあと思うので、あと1年もってくれればうれしいです。






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2017/1/31
文責:福武 功蔵