裁判員裁判の研修を受けました。
<証拠能力について>
検察官が提出した証拠の取調べ請求に対し、弁護人が不同意の意見を述べるのに理由はいらないのですが、
どうして不同意なのかを説明するうえで、証拠能力の議論ができるようにしておくことが必要とのことでした。
証拠能力の議論を分類すると、
1 自然的関連性
その証拠にどの程度の重要性があるかという、必要性の話です。
ア 要証事実(証拠により証明しようとする事実)と証拠との関係。
その証拠で、要証事実がどの程度証明できるのか、ということです。
イ 事件と要証事実との関係
そもそも、問題となっている事件において、要証事実がどのくらい重要なのかということです。
2 法律的関連性
これは、その証拠を、証拠として用いることが許されるかどうか、という許容性の話です。
偏見、混乱、誤導、重複がないように、
証拠の持つ証明力と、証拠を取り調べることによる危険・弊害等を比較考量することで、許容性を判断します。
<主張制限・証拠制限について>
裁判員裁判では、公判前整理手続において、あらかじめ、
裁判で行う主張と、取り調べる予定の証拠とを明らかにしておくというルールがあります。
これは、大勢の裁判員の皆様のスケジュールを調整する上で、
裁判が何日くらいかかるかをあらかじめ明らかにしておく必要があるためです。
主張制限については、2015年5月に最高裁判例が出ました。
裁判になってからアリバイ主張を行い、被告人質問で立証したものですが、
結論としては主張制限まではされなかったとのことです。
証拠制限については、裁判官がかなり厳格に考えていて、
想定していた審理通りに進まないことを非常に嫌がるとのことでした。
<弁護人の冒頭陳述・弁論>
弁護人の冒頭陳述は、「思わせぶり」にしておいてほしい、と裁判所は思っているとのことでした。
詳細にしてしまうと、裁判員が強い印象を持ってしまうから、
あるいは証拠調べで二度同じ話を聞くことになってしまうから、ということのようです。
検察官が提示したものに対する応答程度の、簡単なもの、ただしよくかみあって印象に残るものにするのがよいと思いました。
弁護人の弁論では、裁判員に資料を渡した方がよいそうです。
裁判員の皆様に何を検討して頂きたいか、ということに絞った、短い言葉でできた資料を渡すのがよいように思いました。
短い言葉は意識に残りやすく、議論の材料になることが期待できそうです。
<量刑判断>
量刑の判断においては、犯罪の重さをイメージできるような行為類型、客観的な犯情の重さ、意思決定に対する非難が、
重要な要素となるとのことでした。要素ごとによく整理した方がよさそうだと思いました。
類似事案が過去にどのような量刑となったかを統計的に示す量刑資料というものがありますが、
この量刑資料は裁判員に対し、早い段階で示されるそうです。量刑資料の影響力は大きいのだと思いました。
<その他>
裁判員裁判事件の保釈保証金の相場は、実刑が相当程度見込まれることもあり、300万円から350万円以上とのことです。
裁判員は、更正を監督する情状証人の監督能力を気にするため、
情状証人の監督能力がないとかえって印象がマイナスになることもあるとのこと。なるほどと思いました。
反対に、NPO法人の理事長が方法論的にしっかりとした監督を行うことを証言してくれて、
大きく印象がプラスになった例もあったそうです。