第110回 後見制度支援信託の巻


 後見制度支援信託についての講義を受けました。

 親族後見人の不祥事が後を絶たず、年間で20数億円もの財産が親族後見人によって不当に使い込まれてしまっているという現状があるそうです。

 後見人に監督人を付けるという制度はあるのですが、事前防止策としては足りないところがあるので、

 このような使い込みを防止するため、信託にするのだそうです。

 信託の利用の適否について、事前に専門職が調査して、裁判所が判断します。

 利用に適する場合には、裁判所が指示書を発行します。

 

 適否について考慮すべきことは、以下のことです。

 本人の心身の状況、身上監護面が安定していること。

 親族後見人の適格性に問題がないこと。

 親族後見人に対する監督を尽くした上で、信託の利用について十分に理解を得ること。

 

 以下の事情がある場合には、信託の利用に適していないということになるそうです。

 本人が明確に反対している。

 本人の財産が少ない、または、株式等の信託に適しない財産が多い。

 遺言書が存在することが明らかである(本人の意思に反し、訴訟リスクを抱えることになります)。

 遺産分割や交通事故等の法的な課題がある。

 収支予定を立てることが困難である。

 

 専門職の調査としては、本人の心身の状態について医師と面談したり、

 本人に対し、預金を全額おろして預けてもよいかなどと分かりやすい説明を試みることが期待されており、

 預金についても、定期預金など利息が高いものについて解約の適否をよく考える必要があるので、

 別紙を付けて詳しく報告する必要があるそうです。

 

 信託の利用には、批判もあり、なぜ信託でなければならないのかとか、

 本人の資産を固定化してしまうため本人の利益にならず、かつての禁治産制度に逆戻りしているのではないかなどとも言われているそうです。

 また、信託の利用後は、裁判所の監督が及ばなくなるのではないか、

 虐待や不正な手許金の発生を放置することになってしまうおそれがあるのではないかという危惧もあるそうです。

 まだ試行的な段階だそうですので、今後良い方向へ向かうことを祈っております。




新着順一覧 − 番号順一覧 − 前を読む − 次を読む − トップページ


2014/4/11
文責:福武 功蔵