第17回 双子のパラドックスの解決の巻


 第16回で光速度不変について述べました。

 光速度不変の由来は、観測者が光を一定の時点(時間軸の点)で観測することによります。

 観測者が幅を持った時間(時間軸の線)で光を観測したとしても、

 線というのは点の集まりですから、やはり光速度不変です(光源の運動はドップラー効果として観測されます。)。

 

 さてそうすると、相対性理論それ自体は正しいとしても(※後記註)、

 相対性理論に関して言われていることが、何を言っているのか分からなくなってしまいます。

 いわく、光速(30万キロメートル毎秒)の半分の速度で移動している光源があるとして、

 光源から光源の移動方向へ発せられた光は、1秒後に光源から15万キロメートルの位置にあることになるが、

 光源を観測点とするとこの結果はおかしい(光速が15万キロメートル毎秒となってしまう。)、

 そこで、光源ではじつは0.5秒しか時間が経っていないということにする(そうすると光速は30万キロメートル毎時となる。)。

 つまり、光速に近づくほど時間の進み方が遅くなる。

 いわく、双子の兄が光速に近い速度で宇宙旅行して帰ってくると、双子の弟よりも若くなってしまう。

 いわく、双子の兄を中心に考えれば、双子の弟が光速に近い速度で自分から離れて帰ってきたわけだから、

 双子の弟の方が兄よりも若くなるはずである(双子のパラドックス)。



 上記の結論は、観測問題(観測者が存在すること)を度外視して考えている点にまちがいがあります。

 つまり、「観測者が、何時どこで発せられた光を、何時見たのか」ということを抜きに考えてしまっているのです。

 観測者が光源にいるのだとすれば、観測者は光源が光を発すると同時に光を観測することになり、

 他方、いったん光源から発せられた光が光源から遠ざかってしまうと、

 鏡か何かがない限り、光源の位置にいる観測者がその光をとらえることはありません。

 上記の例でいえば、光が1秒後に光源の位置にいる観測者から15万キロメートルの位置にあるとしても、

 それを観測者が見ることはできないのです。

 もし光が1秒後に、鏡の反射など何らかの理由で観測者へ戻ってくるとしても、

 観測者がその光をとらえるには少し時間がかかります。

(計算すると、15万キロメートルの距離を光は30万キロメートル毎秒、観測者は15万キロメートル毎秒で互いに近づくので、

 出会うには0.33秒かかり、観測者が光をとらえるのは、光が発せられてから1.33秒。

 出会う位置は、光が反射した位置から10万キロメートルのところです。)

 そして、このとき、観測者は、観測者が観測時点で存在する地点を基準とした観測結果を得るにすぎません。

 つまり、観測者は、光が1秒後に折り返した地点(観測者が観測時点で存在する地点から10万キロメートル離れたところ)から、

 0.33秒で光が届いたという観測結果を得ることになります。

 もちろん、光の速度は、光速(30万キロメートル毎秒)です。

 このように、光速度不変なので、無理に時間の進みを遅らせる必要性はどこにもありません。

 つまり、光速に近づくほど時間の進み方が遅くなるなんてことはないのです。

 双子のパラドックスも前提を欠くという形で解決されます。

 時間の進み方が遅くなることは航空機に載せた原子時計で実証されたといいますが、

 重力の影響なのかもしれないし誤差なのかもしれないし、再考した方がよいように思います。

 ちなみに、どうしてこのように考えるに至ったかというと、

 それはやはり双子のパラドックスがよく分からなかったからです。

 分からないものを分からないと言ってよく検討することは大切であるように思います。






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2013/12/23
文責:福武 功蔵