第74回 アナウンスで噛んではいけない場合の巻


 子どもが迷子になるというのは親にとっては心配なことです。

 子どもがいなければ親は親でないのだという当たり前の事実と直面して呆然となります。

 先日デパートに一人で居たら迷子のアナウンスがありました。

 「…迷子のお知らせです…」

 ふむふむ。

 「…紫のダウンジャケットと黒のパンツを着た3歳のおとうさんが、お母さんを探しています。」

 それは心配だろうなあ。

 おや3歳のお父さんはおかしくないですか。

 「…繰り返し迷子のお知らせです…」

 ふむふむ。もう一度聞いてみましょう。

 「紫のジャウンダケット」

 え?

 アナウンスのお姉さんは一瞬言い淀んだのですが、

 すぐに気を取り直してアナウンスを続けました。

 「…と黒のパンツを着た3歳のお嬢さんが、お母さんを探しています…」

 ああそうかそうか、おとうさんではなくてお嬢さんか。

 疑問は氷解しました。

 でも、ジャウンダケットって。

 お姉さん噛みすぎ。

 親なら迷子のアナウンスで噛まれたら心配で仕方ないにちがいありません。

 それにしても、パンツって耳で聞けばズボンのことだと分かるけど、

 文字にしたら下着の方のパンツかと思ってしまうなあ。

 と思うのでした。




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2013/2/17
文責:福武 功蔵