第45夜(2025年11月5日) 百年


 体重増を解消できずに臨んだサツカーの大会は、身体がもたもたして活躍することができなかつた。

 五十歳になつたらスピードとパワーは封印してそれらに頼らずに済むよう技術と魅力を磨くと周囲に高らかに宣言したものであつたけれども、一旦取り下げることにする。スピードとパワーは、やつぱり必要である。



 それはさておき魅力について思い付いたことがある。パソコンのデスクトツプに、赤塚不二夫先生の顔写真がある。その顔写真と同じやうにマジツクで口ひげを書くと面白いかもしれない。眼鏡も、芸人さんが付けるやうな面白眼鏡にしてみたい。





 何でそのやうなことを考えたのかというと、サツカーのチームの仲間と張り切つて夜の街へ繰り出したはいいものの、夜の街の女の子が私の話に対してさほど笑つてくれなかつたからである。

 初対面の人を笑わせる話術を磨く必要があるけれども、そのやうな話術はそもそも持ち合わせていないから、まずは外見から入らうと考えたわけである。



 早速眼鏡店でフレームをいくつか見てみた。極太フレームというものがあり少しく面白い感じを受ける。そんなに太くする必要ないだらうという面白さである。

 大きい眼鏡もありこちらも面白い。そんなに大きくする必要ないだらうという訳である。

 買おうかどうか迷つたけれども一旦見送ることにした。サツカーの大会は来年まで無いし、張り切つて夜の街に繰り出す予定も今のところ無い。





 ところで小説の方はと言うと、例年どおり今年も賞の応募に間に合わなかつたことを告白しなければならぬ。

 今年は短編の賞に応募しやうとしていたので、短編ならばと頑張つて書き上げたものの、推敲を重ねるうちに、推敲が終わらないことに気が付いてしまつたのである。直しても直してもまだ直すところがある。賞の締切りの三日前に気付いて、ああ気付いてよかつたと、行き付けの店で一人で反省会をした。



 今は何をしているかというと、一九八二年に刊行された村上春樹の名作である羊をめぐる冒険を読み終えて、一九二五年に刊行されたスコツト・フイッツジエラルドの名作であるグレート・ギヤツビーの村上春樹訳を読んでいる。

 ‥‥いや、読んでいたのである。どうやらサツカーの大会で宿泊した宿に本を忘れて帰つて来てしまつたやうであり、探しても探しても本が見当たらない。後書きと冒頭の数頁しか読んでいないのに大変勿体無いことをしてしまつた。



 幸いグレート・ギヤツビーは原書を持つているので原書を音読してみたら、一頁目で挫折した。流麗な英単語が次から次に出て来て意味が判らない。幸い野崎孝訳も持つているので、照らし合わせながら読めば何とかなるだらうけれど‥‥読み終わるには来春くらいまで掛かりさうである。



 村上春樹訳の後書きに、スコツト・フイッツジエラルドの作品は会話が素晴らしいと褒めてある。スコツト・フイッツジエラルドは好男子でパーテイーでは女の子に面白い事を言つて笑わせていたらしく、その片鱗が作品の会話に現れているのだらう。

 私もしつかり学び、来春には初対面の人を笑わせることができるやうになりたい。



 ‥‥時代が百年ずれているから、ダメかなあ。






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2025/11/5
文責:福武 功蔵