第82回 名作アンダーテールの巻


 名作アンダーテールについて書きます。私はこのゲームをプレイしていません。いつかプレイできるといいなと思っています。12歳になった長男が楽しそうにプレイしていたのを横で見ていました。(「見て見て」と言われて見ていました。)



 アンダーテールはトビーさんというアメリカの一個人がほぼ独力で作ったゲームであり、グラフィックもUIもシンプルなゲームです。

 トビーさんの名言で「人はシンプルな造形にこそ愛着を持つ」というものがありこれは真実だと思います。

 鳥山明先生のドラゴンボールが世界中でヒットしたのは天才的にシンプルな造形に大きな理由があります(シンプルゆえにバランスは難しく、一般人の目からはよく描けているように見える、アニメーターが書いた孫悟空も、作者である鳥山明先生からは少しバランスがちがっているように見えたそうです。)。



 私はアンダーテールのサウンドトラックを買ってよく聴いています。世界中でアンダーテールがヒットした理由のひとつがこの音楽です。全編にわたりクオリティが高い。トビーさんは、あるシーン(または登場人物)をゲームで作る場合は必ず音楽を先に作ったそうです。それだけ音楽にこだわりが強い。またこのこだわりこそが、私がアンダーテールで大好きなところです。



 「スパイダーダンス」という曲があります。たぶん蜘蛛と戦うときの曲です。

 これがコナミの往年の名作「悪魔城ドラキュラ」を彷彿とさせるのです。曲調やコードの選び方だけでなく、音色もかつてのスーパーファミコンのものをこだわりを持って追いかけている感じがします。トビーさんも私と同じように、スーパーファミコンの「悪魔城ドラキュラ」をプレイして育ったのだと思うと感動です。それが日本ではなくアメリカだったことを考えるとさらにうれしくなります。他にも私のようにファミコン、スーパーファミコンで育った者にとってうれしくなるような曲がたくさんあります。

 他方で「コア」という曲は、たぶん物語の核心部分へ進入する際の曲だと思いますが、こちらはビートにシンセサイザーを乗せて時間経過に沿って音色を歪ませていくというクラブミュージックの手法でかっこよく作られています。

 数ある名曲の中でも人気のある「メガロマニア」や「真のヒーローとの戦い」(長男はこれが一番好きで、ゲームを買う前から動画でよく見ていました。)は、ロックの手法で作られています。主旋律を少しずつ複数のエレキギターでバックアップしていくこの手法は、私にとってはリンキン・パークの「シャドウオブザデイ」(2007年)が初めてで、当時大きな衝撃を受けました。もっと前からある手法なのかもしれません。いずれにしてもトビーさんが「メガロマニア」の元曲を作ったのは高校生くらいの頃だったそうです。思い入れのある曲をこのアンダーテールの最後、大トリに持ってきています。



 最初の話に戻りますが、人はシンプルなものにこそ愛着を持ちます。

 アンダーテールのメインテーマの主旋律はまさにシンプル。これに多彩なアレンジが加えられています。ときにはシンプルな主旋律をあえて外してアレンジ部分だけで進行することもあります。主旋律を外して成立するのがゲーム音楽の特性といえばそうなのですが、アレンジが上手く、日本のエレクトロニカのトップである中田ヤスタカ先生を思わせるようなところもあります。



 トビーさんは日本発の文化を楽しんで受け入れてくれて、アンサーソングのように名作アンダーテールを作ってくれました。

 いつの日か、トビーさんにまた楽しんでもらえるようなゲームを(自分で作れれば最高ですが、そうでなくても他の誰かが)日本で作れるといいなあと思います。

 


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2019/11/8
文責:福武 功蔵