第25回 清武の左足トラップの巻


 心に残るプレーについては、やはり書き留めておきたい。

 2014−15シーズンのブンデスリーガ、ハノーバー対ドルトムント、後半36分。

 1−3(ドルトムントの香川が1G1A)でしかも1人退場で10人となった劣勢のハノーバー。

 ハノーバーの左サイドから攻めるが前方へのフィードをクリアされ、ボールはドルトムントゴールペナルティエリア少し外のあたりに高く舞い上がる。

 ハノーバーのMF清武が落下点に入り、両腕を広げて背後のマーカーをブロックする。

 清武はゴールを背にしている。ボールは高いところから落ちてくる。清武のサポートに入っているのは10番のスティンドルだけ。

 ドルトムントのマーカーが清武の背中にぴったり張り付いて足を伸ばす。マーカーの足はボールには届かなかったが、マーカーを背負った清武には何もできないはず…誰もがそう思った。

 ボールが落ちてくる。清武、マーカーを背負いながら左足の甲でボールを受ける。柔らかいタッチ。

 ボールが少し、清武の胸のあたりの高さまで弾む。見事なトラップだ。

 マーカーはボールが次に着地するところを狙おうとする。

 周囲にドルトムントの選手は三人。誰が清武に寄せるのかはっきりせず、その瞬間に寄せる動きはなかった。

 否、清武の美しいトラップに、ついボールウォッチャーになってしまったのではないだろうか。

 少し弾んだボールが落ちてくる。落ち際を清武が右足インサイドで優しく送り出す。

 ボールは相手選手の囲みを抜けて、ゴールほぼ正面、10番のスティンドルの前へ。

 10番のスティンドルは、ボールが左から右へ流れてくるのを利用した。

 ニア(キーパーの右手側)へ蹴り込むような体勢で左足で踏み込みながら、その間に少し右へ流れたボールに右足を合わせ、

 ファーへループ気味のシュートを放つ。キーパーはニアへのシュートを警戒していたのか、ボールに全く届かなかった。

 対面していたドイツ代表CBフンメルスはさすが、刹那にスティンドルの意図を読み切ってファーのコースを消すようにスライディングしていたのだが、

 スティンドルはそのさらに上をいった。ループシュートでフンメルスのスライディングをかわしたのだ。見事なゴール、2−3と追い上げに成功。

 1人少ないハノーバーは試合終了まで果敢に攻め立てた。試合には敗れたが、二人が輝きを放った瞬間だった。


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2015/4/12
文責:福武 功蔵