心に残るプレーについては、やはり書き留めておきたい。
2014−15シーズンのブンデスリーガ、ハノーバー対ドルトムント、後半36分。
1−3(ドルトムントの香川が1G1A)でしかも1人退場で10人となった劣勢のハノーバー。
ハノーバーの左サイドから攻めるが前方へのフィードをクリアされ、ボールはドルトムントゴールペナルティエリア少し外のあたりに高く舞い上がる。
ハノーバーのMF清武が落下点に入り、両腕を広げて背後のマーカーをブロックする。
清武はゴールを背にしている。ボールは高いところから落ちてくる。清武のサポートに入っているのは10番のスティンドルだけ。
ドルトムントのマーカーが清武の背中にぴったり張り付いて足を伸ばす。マーカーの足はボールには届かなかったが、マーカーを背負った清武には何もできないはず…誰もがそう思った。
ボールが落ちてくる。清武、マーカーを背負いながら左足の甲でボールを受ける。柔らかいタッチ。
ボールが少し、清武の胸のあたりの高さまで弾む。見事なトラップだ。
マーカーはボールが次に着地するところを狙おうとする。
周囲にドルトムントの選手は三人。誰が清武に寄せるのかはっきりせず、その瞬間に寄せる動きはなかった。
否、清武の美しいトラップに、ついボールウォッチャーになってしまったのではないだろうか。
少し弾んだボールが落ちてくる。落ち際を清武が右足インサイドで優しく送り出す。
ボールは相手選手の囲みを抜けて、ゴールほぼ正面、10番のスティンドルの前へ。
10番のスティンドルは、ボールが左から右へ流れてくるのを利用した。
ニア(キーパーの右手側)へ蹴り込むような体勢で左足で踏み込みながら、その間に少し右へ流れたボールに右足を合わせ、
ファーへループ気味のシュートを放つ。キーパーはニアへのシュートを警戒していたのか、ボールに全く届かなかった。
対面していたドイツ代表CBフンメルスはさすが、刹那にスティンドルの意図を読み切ってファーのコースを消すようにスライディングしていたのだが、
スティンドルはそのさらに上をいった。ループシュートでフンメルスのスライディングをかわしたのだ。見事なゴール、2−3と追い上げに成功。
1人少ないハノーバーは試合終了まで果敢に攻め立てた。試合には敗れたが、二人が輝きを放った瞬間だった。